東京大学犬山研究林にて「長期生態系プロット調査2021」を実施しました
3月26日(金)、愛知県犬山市塔野地大畔地区に広がる東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林生態水文学研究所犬山研究林(以下「犬山研究林・研究林」という)へ出かけました。(昨年は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から学校が休校となり実施できませんでした。)この犬山研究林は東京大学大学院農学生命科学研究科の附属施設『生態水文学研究所』に所属しています。生態水文学研究所は、森と水と人をテーマにした教育研究に取り組まれています。近年では、90年以上継続してきた河川流量の長期観測データや20年前からはじめた森林の構造や成長をモニタリングする長期成長プロット調査データ等を活用し、“森林地域を対象とした生態水文学の教育と研究”を行っています。
今年は、市邨高校、一宮高校、一宮南高校の3校の合同チーム(生徒35名)で調査を実施しました。ただし、今回は3密を避けるために4班に分かれて調査しました。
午前中は研究林に入りました。研究林には約20年前に作った方形区(20m×20m)があります。この方形区は4区画(10m×10mが4つ)に分けられています。班ごとに1区画を調査しました。

今回の調査は、方形区内(20年前に設定してあります)に生えている樹木の胸高直径(地上1.3mあたりの樹木の直径)を測定することです。樹木の成長は直径の値を比較することで見ることができます。1区画約40本の樹木を特殊なメジャー(ダイヤメーター:円周を測れば直径がひと目でわかる)で測定します。


2年前の調査では、今後の調査を見据えて木々1本ずつにステンレス製のタグをつけました。今回はこのタグを頼りにして木々を探せるため計測が容易になっています。先輩の作業に感謝です。
測定後は演習林内を犬山研究林利用協議会の皆様に案内していただきました。研究林内で見られる動植物の説明をしていただきました。特に尾張丘陵地の林床に生育するヒメカンアオイにはギフチョウは卵を産みつけます。ギフチョウの幼虫はヒメカンアオイの葉を食べて成長し、夏頃になると葉の裏側で蛹になり翌年の春まで蛹のまま越冬します。春になると羽化して再びヒメカンアオイに産卵を繰り返します。


研究林がある尾張丘陵の山林は、江戸時代ごろから燃料の薪の材料として切り出されたそうで、樹木は根こそぎ抜かれたために山には樹木がなくなり、山肌が白い土砂が剥き出しになったハゲ山となってしまいました。そのため、台風や大雨になると流された土砂で町が埋まってしまうこともあったそうです。この問題を解決するために当時の東京帝国大学(現在の東京大学)に研究所が設立され今も続いています。研究林を歩くと土砂の流れをくい止めるさまざまな堰堤が見られ、協議会の皆さんに紹介していただきました。



昼食後は、測定結果をもとに森林の変化を考察します。(詳しくは別途報告します。)樹種の移り変わりがよくわかりました。植生の遷移による変化と、病気による変化などで森の様子に大きな変化が見られることがわかります。自分たちの計測結果と過去の測定結果と比較することで森の変化を読み取ることができます。
この調査は来年も実施する予定です。これからもこの調査を長期間にわたって継続的に行うことで森の変化や森林の再生に関する貴重なデータとなることでしょう。
忙しいところ私たち高校生のために、貴重な時間を使って説明していただいた東京大学の先生、犬山研究林利用協議会の皆さん、本当にありがとうございました。